千葉さんが脳梗塞を発症して以降の入院生活から、退院後の生活について全9回に渡ってお届けします。
今ではマラソンをはじめとした新たな挑戦に貪欲な千葉さんですが、これまで多くの葛藤を乗り越えてきました。連載の締めくくりに、心の持ちようや乗り越え方のヒントをまとめてみます。
「何かを失ったら、何かを得なければいけない」。千葉さんが脳梗塞発症後、ことあるごとにつぶやき、大切にしてきた思いです。この思いを原動力に、あきらめずリハビリを続け、改善によってできることを増やすことと、障害を受け入れてこれまでとは違う方法でできるようになることを模索すること、両方を追及してきました。そんな千葉さんが、情報発信を大切に考えるのは、まさにそれが「病気の経験者だからこそできること」と考えるからです。
どうにか自立生活をおくることができる身で退院はしたものの、実際に職場に復帰したのは脳梗塞発症から18か月後でした。焦る気持ちがなかったわけではありません。しかし、ただ復帰を急ぐのでなく、長い目でみての社会復帰を果たすため、千葉さんがおこなったのは職場との入念なすり合わせとリハビリの段階を経て業務遂行できる身体つくり、そして前向きに「どうしよう」か、を考えて実行することでした。
「脳梗塞患者がフルマラソンに挑戦する」―最初からできないと決めつけて自分に蓋をするのは、その後の可能性に蓋をしていることと同じなのかもしれません。最初からできる人はいません。リハビリだってトレーニングだって、根気強くやることで、気付いたら結果がついてくるものだと信じていた千葉さんが「毎日リハビリ」を心がけて積み重ねた先に成し遂げたフルマラソン完走までの記録です。
日常生活の中で自力でリハビリを毎日続けるのは難しいときくことがあります。あえて通勤、通院など外出時の道のりをリハビリの時間としてしまうことも生活にリハビリを定着させる工夫のひとつです。今でこそフルマラソンを走りきるまでになった千葉さんも走り始めた当初は1キロの走行でも耐えがたい痛みを抱える状態だったといいます。その後、原因を調べ、対処を考え、一歩ずつステップをあがってきた過程をひもといてもらいました。
脳卒中によるリハビリ病院の入院は日数の期限があり、自立生活をできるまでに改善がみられたか、もしくは期限がきて、退院することになります。それでもなお後遺症がある(多くの)場合は、その後もなんらかの形でリハビリテーションを継続していくことになります。年齢によって使える制度も、後遺症の程度や個人の生活環境によっても、必要なリハビリは異なりますが、日常生活の中で自分の身体に向き合う千葉さんの心持ちを振り返っていただきました。
病院での生活の大きな目的は、早期のリハビリによる機能回復です。「修行」とも思えるようなコツコツとした努力を積み重ねて、少しずつ手足や言葉の機能が改善していく姿は、同様の疾患・後遺症を抱える多くの方々の参考になるのではないでしょうか。
後遺症により以前はできていたことができないことに気づくことから入院生活が始まります。検査とリハビリを繰り返す毎日の中で、トラブルに見舞われつつも、転院を経て、自分の置かされた状態や家族との繋がりを理解していくことになります。
34歳という若さで、ある日突然脳梗塞を発症した千葉さん。脳梗塞を発症した時の経緯から、どのような症状があったか、後遺症が残った事実に対する内面のお気持ちなどについて語っていただきました。